3

「あ、あいつが迷惑かけたな。悪い」

要がばつの悪そうな顔で謝る。

「なんで君が謝るのさ。
あ、もしかして彼女?」

「あ…いや…まぁ…」

「へぇ、可愛い彼女じゃないか」

心にも無い事を言うのには慣れている。
要は照れたように笑った。
その笑顔の裏で泣いている者がいる事を忘れて。

……反吐が出る。

内心そう吐き捨てると賢斗は次の授業の用意をする。
その後特に変わった事無く授業は進む。

変化が起きたのは昼休み。
賢斗はカナに屋上に呼び出された。
向こうから仕掛けてくれるのは好都合だった。

「何、話って?」

「あのね、カナ、荊君が好きなの!
付き合って下さい!」

あぁ本当に……反吐が出る。

「園原さんは、要と付き合ってるんじゃないの?」

「要より荊君が好きなの!」

「ごめんね、君、全然タイプじゃないから。
それに俺、人間嫌いだからさ。特に君みたいな奴が一番嫌いなんだ。
あ、それと、気安く名前で呼ばないで」

ニッコリと笑って賢斗は言う。

「な…
カナの事そういう風に言うんだ!
ならあんたにも苦しんでもらうから!」

ヒステリックに叫ぶカナをぼんやりと見つめながらうるさいな…と賢斗は思う。
カナはカッターを取り出すと自分の制服を破き、悲鳴を上げた。

「キャァァァァッ!」

たちまち2-Cのクラスメイトが駆け付ける。

わざわざ階段駆け上がって来たのか、ご苦労さん。

賢斗は場違いな事を考える。

「ふぇ…要…怖かった…っよ…荊君が…っ」

だから名前で呼ぶなって言ったじゃん。
まぁ本名じゃないからいいけど。

2-Cのメンバーから鋭い視線を受けても賢斗は心ここにあらず、といった様子だ。

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