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教室に入るとこちらに向けられる好奇の眼差し。

「神無月 荊です。
よろしく」

ニッコリと微笑む荊…もとい賢斗。

「…カッコいい…」

カナが小さな声で呟く。
そのカナを見て、賢斗の目がスッと細められる。

「神無月は病気で一年程入院してた為お前らと同じ学年として転校してきた。
仲良くしてやってくれ」

教師の言葉に賢斗は内心笑う。

そうそう、『仲良く』ね…?

「えーじゃあ神無月の席はあそこだ」

そう言って教師が指したのは並んだ空席の内、窓際の席。
教室が僅かに騒めくが賢斗はそれを気にする事無く席に着く。

「裏切り者の席なんて可哀想」

という声がちらほら聞こえる。
どうやらここは悠希の席だったようだ。

「なんの偶然だろうねぇ」

誰にも聞こえないような小さな声。
黒縁眼鏡の奥で妖しく光る黒目。
騒がれても面倒なので左目はコンタクトで隠していた。

休み時間になると賢斗は手始めに前に座っている要に話し掛ける。

「ねぇ、ここの席ってなんで二つ並んで空いてるの?」

ビクッと不自然に要の肩が跳ねる。

「ひ…1人は事故で死んだんだ」

事故死、ねぇ…?

「ふぅん…
じゃあもう1人は?」

「それは…っ」

「ねぇねぇ、神無月君!」

賢斗が悠希の事を聞き出しそうとした時、カナに声をかけられる。
一瞬だけ不快そうに眉間に皺をよせるが次の瞬間、営業用の爽やかな笑顔で振り返る。

「何?」

「神無月君ってどんな子がタイプなの?」

それから彼女はいるのかとかなんとかを矢継ぎ早に賢斗に訪ねる。
それらを全て適当に流すとカナは満足したのか自分の席に戻っていった。

本来人間嫌いの賢斗にとっては鬱陶しいことこの上無いがそう言った感情は一切見せず要に向き直る。


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