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その日、清修高校2年C組は賑わっていた。
どうやら転校生が来るらしい。

「要ぇ、今日転校生が来るんだってぇ」

少女、園原カナは彼氏である佐野要に甘えていた。

「あぁ、らしいな」

「要さーん、朝からイチャコラすんのやめてくださーい」

そんな二人の間を裂くように五十嵐遼の茶々が入る。
どこにでもある普通の風景。
ただ、誰も二つの空席を見ようとはしなかった。

二つ並んだ座席は誰かを待つように静かに存在している。
誰かを、そう、九条詩音と鈴村悠希を待つように……

詩音の死は事故死として認識され、悠希はカナを虐めた裏切り者として2-Cでは通っていた。

『さぁ、楽しい復讐劇の幕が上がるよ』

何処からかそんな声が聞こえる事も知らず。
漆黒の学ランに身を包んだ黒髪黒目の彼は前を行く教師の後を楽しそうに着いていく。

「それじゃあ、私が呼んだら教室に入ってくれ」

「分かりました」

彼は綺麗な笑顔を浮かべる。

教師が教室に入っていくのを見届けると彼…賢斗はクスクスと笑った。

「さぁて、ゲームを始めようか。
俺も学校なんて久しぶりだからねぇ。
楽しませてよ?」

独り言を呟いていると中から教師の声がかかる。

「おい、神無月、入って来い」

教室に入る前に賢斗は一度ニヤリと笑うと復讐劇の舞台へと上がる。


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