私が初めて「妖怪」というものを知ったのは、およそ6年前、8,9歳の春のこと。
 そのころ我が家はごたごたしていた。母が、仕事人間の父にうんざりして、家出してしまったのだ。学校があるからと、私は住んでいたアパートに残された。
 父は私をお祖母ちゃんと、まだ結婚していなかった叔母さんのいる実家に預けた。同じ学区内だったから、不便はなかった。むしろ、街の中心にあるアパートより、少し外れたところにあるお祖母ちゃん家の方が学校に近かった。
 預けられて一週間ほど後、私は毎晩庭の方から変な音、何かの鳴き声のようなものが聞こえるのに気付いた。
 気になって、おばあちゃんに尋ねた。
 お祖母ちゃんは、意外な質問だったようで、目を丸くした。それからちょっと考えてから答えた。
「要ちゃんは、妖怪って知ってるかい。」
 私は首を横に振った。
「ようかい?なあに、それ。」
 お祖母ちゃんはにっこり微笑んで、
「妖怪っていうのはね」
と話し始めた。






[ 2/2 ]

[*prev][目次][next#]

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -