「もう四十九日なのねぇ」
 昨夜母が漏らしたお決まりの台詞が甦った。

 今日は、祖母の四十九日。
 
 庭の木々がざわめいている。

 車庫の方から父の行くぞー、という声が聞こえた。

 
 寺で叔母さんが来るのを待つ間、父はお坊さんに挨拶し、世間話などをしていた。母は私の隣で、あれはおばあちゃんの好きだった花ねー、としみじみと言っている。
そのうち叔母夫婦がやってきて、母を相手にニ、三のことを話した。
 やがて、法要が始まった。

 読経の間、私はそっと右手にいる親類を見た。

皆、数珠をもって手を合わせている。

私には、誰も他人のように思えた。血のつながっている父と叔母でさえも。

みんなは、知らない。

お祖母ちゃんは死んでなんかない。眠っているだけだ。

あの人は、蛇の妖怪なんだ。


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