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彼女は赤ん坊のときに、寺に捨てられていた。そこの年老いた和尚さんと、村人達に育てられたそうだ。彼女の名前は、村でたくさん育てていた紅花から、和尚さんがつけたんだって。
大きくなって、畑仕事も家の事も手伝えるようになった。それがとても嬉しかったと言っていたよ。
でも、その頃に、和尚さんが旅に出ると言い出した。帰らないかもしれないとも言った。彼女も、村人も、必死で引き留めようとした。けど、和尚さんは旅に出てしまった。
出立のとき、和尚さんは長年使っていた数珠を渡したらしい。必ず返すよう約束して。
いや、それは見せてもらわなかった。
それまで通り彼女は村の皆から助けられながら、寺で暮らし続けた。それが何年も続いた。
そのうち、村には、和尚さんは北の方で亡くなったという噂が流れ、それは真実として扱われた。
彼女はそれを知っていたけど、誰も、何も言わなかった。
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