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とある農村。傾いた日が田畑を、家々を、道を照らし、薄く赤く染める。
遊びまわっていた子どもらが軒下で作業していた男に寄って行った。
「ね、今日も何か遠くのお話、してよ」
男はにっこりと笑った。
「では、少し待っておくれ。片付けてしまうから」
それからにやりとして、
「手伝ってくれてもいいんだよ」と言った。
男は子どもらを自分の前に座らせた。
「今日は、そうだな。不思議な話をしようか。人によっては涼しくなるかも」
一人の女の子が、えっという顔をした。
「あ、全然怖くはないから、平気。」男は微笑んだ。
2,3人の子は「なんだー、怖い話聴きたかったー」と声を上げた。
「僕はあまり怖い話は得意じゃないからね。ほら、弥吉さんなんかは上手だから、今度頼んでみるといいよ」
そして語り部は子どもらを見渡して手を軽く打った。
「では、お話始めましょう。」
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