Side I

薄暗い部屋に人工的の明かりばかりが目立つ。
その光を放つモニターを背に、複数の人影が部屋の中心にある水槽を見つめていた。

薄い緑色の液体で満たされた円柱型の水槽の中には、まだ十歳にもならないであろう一人の少年が眠っていた。
眠っていたけれど、ぼんやりと外の会話は聞こえてきた。

「本当に大丈夫なのか?」
「あぁ、我々の理論に間違いはない。
10年は確実に隠し通せるはずだ」

聞いた覚えのあるような、ないような声だった。
隠す?何を?
誰から隠すんだ?

浮かんだ疑問はけれど問うことすら億劫だった。
これが夢か現かすら区別が曖昧で、ぼんやりとした意識が段々と薄れていく。





「すまない、イアル」



イアル。
そう俺を呼んだのは、一体誰だっただろうか。





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