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「細っこいのも相変わらずだね。
ちゃんと食べてる?
色々話もしたいし、久しぶりにご飯でも食べに行こうよ涼月」
「…あんたの話は長いから嫌だ」
「つれないなぁ」

素っ気ない彼の返事にもにこにこと笑うアランは、こちらに近づいてくる足音に気がついた。

「え、何この人集り!?」
「何かあったの……ってあれ?」
「二人も久しぶりだね」

人混みの中からひょっこりと顔を覗かせたのは、案の定というか、湊の幼馴染二人だった。
授業後、そのまま彼を迎えに来たのだろう。
そこらへんも相変わらずだなぁ、とアランは思った。
彼ら二人と顔見知りになったのも、湊を通じてだった。

「え、どうしてここに!?
任務帰りとか?」
「そうそう。
で、今涼月に夕飯のお誘いをしてあっさり振られたトコ」

やれやれと態とらしく肩を竦めるアランは、ちらりと湊に視線を向ける。
周りのざわめきも、幼馴染二人の声も、今の揶揄するようなアランの言葉も、何一つ興味がないと言うような、いっそ気だるげにも見える無表情だった。
あまりに空虚だというのがアランの彼に対する第一印象で、実のところその印象は今も変わっていない。

「何でだよ湊!せっかくのお誘いだよ!?」
「そうだよ、久しぶりに会えたんだし」
「じゃあ二人が行けば良い」

もはや面倒臭そうな様子を隠しもしない湊は、どうあっても行く気はないようだった。こうなってしまえば、湊は絶対に動かないということは三人とも重々承知である。
仕方がないとため息を吐いて、アランは蓮と燿に向き直った。

「と、いうわけだから二人とも付き合ってくれるかい?」
「先輩のお誘いとあらば、そりゃ喜んで!」
「湊、本当に良いの?」

最後に一度、念を押すように尋ねたが彼は既に帰り支度を始めている。
そうして荷物を纏めると、もう用はないと言わんばかりにさっさと立ち去ってしまう。
残された三人は顔を見合わせ、苦笑を浮かべると何処行こうか、と呑気に話ながら歩き出した。

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