3

飛んできたチャクラムを弾き返し、一つ息を吐いた湊は刀を地面に突き刺すと静かに詠唱文を唱えた。

「蒼き命の源よ」

ごぽり、と湊の声に呼応するように刀を指した場所から水が溢れ始めた。

「ここに集い波紋を成せ」

詠唱が終わったと同時に刀を引き抜くと、勢いよく水が吹き出した。
その大量の水は吹き荒ぶ砂嵐に巻き込まれ、やがて大きな水の竜巻へとその姿を変えた。
それだけでは終わらずに、湊は手を上に翳す。

「滴水成氷」

その呪文と同時に、巨大な水の竜巻がぱきりと凍りついた。
翳していた手を握りしめると、氷は粉々に砕け散る。
無数の刃となった氷は、驚いたような顔をしている相手に矛先を向けると、一斉に降り注ぐ。
我に返った相手が慌てて防御の姿勢を取ろうとした、その僅かな遅れを、湊は見逃さず………



「終わりだな」



ピタリと刀の切っ先を相手の喉元に突きつけて、湊は静かに告げた。
勝負あり、とヴォレクが宣言したのを聞いて彼は刀を収めた。
それを見て、周りで彼らの戦いを見守っていた人達も詰めていた息を吐いた。

「姿を隠したなら気配も隠せ。
いくら姿が見えなくたって、あれだけの殺気をぶつけられれば馬鹿でもあんたの位置が分かる」
「てめぇ……っ!」

アドバイスなのか挑発なのか分からない彼の言葉を、後者と受け取った相手が堪らず湊に殴りかかろうとした時。


[ 11/13 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
- ナノ -