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開始の合図と共に振り下ろされたチャクラムを、湊は自らの刀で受け止めた。
難なく止められた攻撃に、相手の表情が険しくなる。

「てめぇはいつもいつも俺を馬鹿にしやがって…!」

鍔迫り合いの中で吐き捨てられた相手の台詞に、湊は怪訝な表情になった。

「……馬鹿にした覚えはないが」
「そのスカした態度が腹立つって言ってんだよ!!」

後ろに跳躍して一度間合いを取り直した相手は、湊を睨みつけながらそう怒鳴った。

本当に、腹立たしかった。
圧倒的な力を持っているくせに、この世の全てに興味がないような顔をしているところも。
どれだけ彼に突っかかっても、全くの無反応で、まるで自分など眼中に無いようなところも。
涼月湊という人間の全てが、腹立しくて仕方なかった。

せめて彼が自分の力を誇示するような性格をしていたら。
自分の嫌味に反発して、やり返してくるような奴だったら。
きっと、ここまで苛立つこともなかったのに。

「アレーナ・トルメンタ!」

苛立ちを攻撃性に変えるかのように彼が呪文を唱えると、湊を中心として辺り一面に砂嵐が巻き起こった。
完全に閉ざされ、相手の姿も見えぬ視界に、湊は僅かに目を細めた。

不意に右方向から気配を感じて咄嗟に身体を反らせば、次の瞬間頬をチャクラムが掠り、一筋の血が流れ落ちた。
それを皮切りに、四方八方から殺気に満ち溢れた風の刃とチャクラムが飛んでくる。
それらを器用に刀で受け流しながら、湊はどうしたものかと思考を巡らせた。

「偉そうな事言った割に防ぐので手一杯かぁ、おい!」

砂嵐の外側にいるのであろう相手の怒号が響く。
何故相手がそんなに怒っているのかは分からないが、湊としてもこのまま終わりにする気はなかった。
自分が存外好戦的だということは自覚しているつもりだ。


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