Side S

……夢を見た。

青い蒼い水の中を、ゆっくりと沈んでいく夢。

どうして水の中にいるのか、沈む前は何をしていたのか、何も分からないまま、ただ沈む。
やがて水底に足が着いて、辺りを見回しても誰もいない。

水の中の世界は、だだっ広くて、何もない。
否。
たった一つだけ、扉がある。
何かを凍らせているのか、氷に覆われて、厳重に鎖で封鎖された扉だ。
好奇心でその扉に手を伸ばした時、突然後ろから声が聞こえた。





「それに触らない方が良い」







驚いて振り返ると、先程まで誰もいなかったはずのこの空間に、一人の人間が立っていた。
何故か顔はよく見えなかったけれど、声と体格から男だと分かる。

「お前は……?」
「俺のことを聞く前に、君は君のことを分かっているのかい?」


















「俺、は……」

















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