6

それでもこうして味気ない食事をする湊を、演習で怪我を負っても呻き声一つ上げない湊を見ると、今のままで良いのだろうかとも思うのだ。
結局は、毎回茶化すように誤魔化してしまうのだけれど。

「もーサプリメントとかしか食べないからいつまで経っても筋肉つかないんだろー」
「………うるさい」
「痛い!」
「今のは地雷踏み抜いた燿が悪いね」

食生活も勿論だが、元々筋肉がつきにくい体質なのか、湊は酷く華奢だった。
厳しい訓練を受けているだけあってそこそこ体格の良い者達が集まる中で中性的な顔立ちに華奢な体型の湊は下手をしたら女性に間違われかねない。
本人もそこは気にしているらしく、今も揶揄するように言った燿の足を全力で蹴り上げた。

「ピンポイントで脛を狙わなくても……っ!!
と、とにかく湊はちゃんとしたもの食べろよ!」
「それには俺も賛成」
「……断る」

あまりの痛さに目に涙を浮かべながらも、湊を指差した燿の意見に蓮も頷きながら彼の目の前に置かれたのは一つの握り飯。
いらない、と突き返そうとしたが。

「湊が心配なんだって!」
「俺達の為だと思ってよ」

目の前には蓮、左には燿。
更に角の席に座っていた為、完全に囲まれる形となった湊に逃げ場はない。
そして本人にその自覚はないが、彼は存外この幼馴染達に弱かった。
数分の間、穴が空くほど握り飯を見つめた湊は暫し躊躇った挙句、渋々それを手に取り口に運んだのだった。


[ 8/13 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



×
- ナノ -