彼女の頼みごとはこうだった。

この部屋のブラウン管テレビの中に特別なテレビが一つだけある。

「世界で一番危険なテレビ」

彼女はそう表現した。

そのテレビを、なんとかして僕に見つけて欲しいというのだ。期限は一週間。業者がここにある廃棄予定のテレビを回収しにくるまでに見つけなければいけない。

それまでに回収しておかないと、僕に危害が及ぶ。
僕に危害?一体全体、どういうわけで僕なのだろう。とりたてて頭がいいわけでも、格好良いわけで、金があるわけでもないのに。家族とか、恋人でもない。琴子にとってはどうでも良いクラスメートの一人のはずだ。
どうして彼女は僕を助けようとしてくれているのだろう。

琴子は、ごめんなさい、とか弱く呟いた。こんなことになったのは自分のせいなのだと。
僕は琴子の為の迷惑ならいくらでも被っていい。だけど、琴子の何かのせいで、僕に危害が加えられるという点はどうにも納得がいかない。

だけど、琴子はふるふると首を横に振るだけで、それ以上は何も教えてはくれなかった。


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