「だから、思い出のテレビ作戦。結局失敗だったけど。でも、ある意味成功。」
そう言うと琴子は得意げに微笑んで、右の拳を胸の前に、つまり小さくガッツポーズをして見せた。いちいち可愛い。
確かに僕は彼女を思い出せなかったから、作戦は失敗と言える。でも、成功とは。
「どういうこと。」
「薫君があの頃と変わらず、優しいままだったから。また、一から仲良くなれるかもって思えたの。」
頼まれたら断れない性格を、彼女は優しいといった。僕は気恥ずかしかったが、悪い気はしない。琴子になら尚更だ。
なんとなく顔を合わせづらくて、テレビを眺めながら、こいつらどうなんのかな、と考えてみた。きっと、どろどろに融かされて、また別の何かになるんだろう。思い出のテレビも、いつかは。
アナログ万歳、ブラウン管万歳。
静かにそのときを待つテレビ達をそう送り出してやりたいと思った。
琴子が口を開いた。
「薫君、最後に、一つ。本当に最後。」
何だ、急に改まって。
さっきまでよりも大切なことのようだ。
でも、咳払いしたり身なりを整えたりしている本人の表情は、話し始めたときに比べてずっと柔らかだ。
「あの頃の私には言えなかった事、今言います。良い?」
はい、としか答えようがないではないか。
「どうぞ。」
再び咳払いを一つ。琴子の白いのどが、こくんといった。



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