no title
ざあぁぁぁ…と音を立てて、激しい雨が降っていた。
道行く人々は皆なるべく濡れないようにと足早に歩いて行く。
そんな、大通りから少し離れた人気のない通りで一人の少年が同じように帰路を急いでいた。
まだ夕方にすらなっていないというのに、分厚い雲に覆われた空は薄暗く、どこか不安になる。
雨で良好とは言えない視界の中、少年はランドセルを揺らして歩いていた。
ふと前から眩しい光を感じて顔を上げると、一台の車がこちらに向かって走っていた。
思いの外近くに来ていたそれは、少年が逃げる事を許さなかった。
全てがスローモーションに映る中、焦ったような運転手の顔は嫌によく見えた。
どんっ、と鈍い音がして少年の身体が宙を舞う。
凄まじい痛みと共に自分が跳ねられた、という事を頭の片隅が理解した瞬間、少年の意識は闇に包まれた。
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