#1



もしも人が「都市を制圧する組織」と聞いたら、「何莫迦なこと言ってんの」と鼻で笑うかもしれない。実際、その都市の誰もがそう思っていた。






「ふはははは、この日を待っていた―――!」
肩で髪を切り揃え、過度に制服を着崩した―――逸れを人はだらしないと呼ぶ―――女子生徒が、普段ならばすっからかんの財布を広げてニヒルな笑みを浮かべた。
「ほんっとお前面倒くせえ、っていうかそのドヤ顔でこっち見んな」
「蒼ぃー!私の時計そろそろ返せ…って、うわ、この子何があったの」
「あ!季都、聞いて、昨日自動販売機の下で五百円玉拾った」
何処にでもある普通の女子高生の会話よりも、気持ち逸脱した残念な井戸端会議を繰り広げるのは、桧深羅(ひのき みら)、如月蒼(きさらぎ あおい)、梁川季都(やながわ きと)の三人で、いたって学園アイドルでも無ければ、ミステリアスな転校生も含まれていない、つまり小説にするには非常に面白味の無い人間の集まりだ。
「あれ、珍しいね。深羅の財布に百円以上入ってるとか」
季都は長身の蒼が片手を上げてぶら下げた時計にしがみ付きながら目をしばたかせた。
「ん!だから今日今週のサタデーとポテチ買ってくる」
「深羅の財布って漫画とじゃがいもに呪われてるよな」
「良いから蒼、早く返してぇ」
「失礼な!リア充し過ぎて過労で痩せた財布と言ってくれたまえよ」
呪われた財布を片手に深羅はびしりと人差し指を突き付ける。蒼が呆れて片手を開いた瞬間に、季都はほくほくと時計を奪い返した。



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