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小さな物音が聞こえて、少年は目覚めた。
自分が公園に居たところまでは覚えていたが、そこから先の記憶は酷く曖昧だ。

上体を起こして辺りを見回すが、全くこの場所に覚えが無かった。

「お、起きたか?」

「あんた…」

突如目の前に現れた男の顔を見て、少年の記憶が蘇る。
公園でこの男と会った後、どうやら倒れてしまったらしい。
とすると、ここは男の家だろうか。

そんな風に自分の状況を分析する少年の思考を遮るように、男は口を開いた

「そりゃあんな大雨の中傘も差さずに居たら風邪引くわな。
まぁちょっと身体弱ってるが、二、三日安静にしてりゃすぐ治るだろ。
ところで、お前、親御さん心配してるだろ。連絡した方が良いよな?」

男の問いに、思わず少年は笑ってしまった。
男の危惧は、少年にとって馬鹿馬鹿しいものでしか無かったからだ。

「必要無いよ」

ただ、短くそう答えた。
他の答えを、彼は持ち合わせていなかった。

「必要無いってお前なぁ…」

「ぼくを心配する人なんて居ないから、必要無い」

少年はただ真実を語っているだけなのに、男は酷く複雑そうな顔をした。


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