no title

「あんたに関係無いだろ、ほっといてくれ」

およそ年齢に不釣り合いな口調だった。
良く言えば大人びているし、悪く言えばませている。

少年はそのままブランコから降り、男の横を通り過ぎようとするが、反射的に男はその腕を掴んだ。

「…何なの?
児童誘拐が趣味なの?」

随分な物言いに、男の額にピシッと青筋が浮かぶが相手は小学生だと必死に言い聞かせて堪える。

「ちげぇよ!
こんな時間にガキ一人で放っておけるわけないだろ!」

「あんたがどうしたいかなんて聞いてない。
ぼくは放っておいて欲しいんだ」

そう言って男の手を振り払おうとした少年の身体がぐらりと揺れる。

「おい!?」

慌ててその小さな身体を受け止めるが、その身体が持つ温度の高さに唖然とした。

「はぁ!?
熱出てんじゃねぇか、こいつ!」

この雨の中放っておくわけにもいかず、男は仕方なく少年を家に連れて行く事にした。

(つーか、別にこれって誘拐じゃないよな…?)

そんな不安も抱えつつ、男は彼を運んだ。
この出会いが、この後彼にどれ程の影響を与えるか予想もしないで。


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