no title

彼らが出会ったのは…いや、男が少年を拾ったのは、土砂降りの雨の中だった。

男は仕事帰りで、その日は少々帰りが遅かった。
世間一般ではあまり褒められた仕事じゃないが、男は自分の仕事に誇りを持っていた。

バケツをひっくり返したような、と言う表現がピッタリの凄い雨の中、男は帰り道の途中にある公園で一人の少年を見つけた。
まだ8歳くらいだろうか。
子供が公園にいるのは不思議じゃないが、今の状況を考えれば不自然さを感じざるを得なかった。

まず、今は深夜だ。
子供が出歩くような時間ではない。

次に、彼はこの大雨だというのに傘を差さずにブランコに乗っていた。

そんないくつかの不自然すぎる点が気になって、男は少年に声をかけた。

「おいどうした?
傘も差さないで、子供が出歩く時間じゃないだろう」

しかし少年は、俯いた顔を上げようとしない。
完全に無視を決め込んでいた。

「おい、親御さんはどうした?
こんな時間まで出歩いてたら心配するだろ」

「……うるさいな」

尚も話しかけると、ようやく顔を上げて反応が返ってきた。
雨に打たれたせいで髪が顔に貼りつき、彼の表情を隠す。
一面の黒の中、少年の白い眼帯だけが浮き出ていた。


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