no title
静貴が賢斗に意味深な発言をしてからは静貴の所を訪れる患者が激増した為、静貴は滅多に帰って来なくなった。
帰ってきてたとしても疲れ切った様子でベッドに倒れこみ、そのまま眠ってしまう。
賢斗としては薄々予想はしていた事だから、特別驚きはしなかった。
そんな日々が暫く続いたある日、玄関の扉を開ける音で賢斗は目が覚めた。
元々眠りが浅い方であった賢斗にとっては小さな鍵の音でも十分な目覚ましだったのだ。
いつもならそのまま部屋に下がってしまう静貴だが、その日は何故かすぐに部屋に戻る気配は無かった。
何となく気になった賢斗は、そっと起き出してリビングへと向かう。
ベランダに居た静貴はぼんやりと夜空を見ながら煙草を燻らせていた。
「…珍しいね、静貴が煙草吸うなんて」
突然賢斗が声を掛けても静貴は驚いた様子もなくあっさりと答えた。
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