no title
何処で何が狂ったのかなんて、彼には分からなかった。
何が起きているのかも、誰が悪いのかも、彼には分からなかった。
(一体ぼくは誰を憎めば良い?
……あぁ、そうか、“俺”が憎むべきなのは人間そのものなのか)
ふと頭に過った考えは、驚くほどすとんと彼の胸に落ちた。
堪えきれなくなって、彼は嗤った。
(誰を憎めば良いのか分からないならば、答えは簡単だ。
全て憎んでしまえば良い)
最大限の蔑みと、憎しみと、絶望を込めて、彼は嗤った。
彼の周りに横たわる四つの死体の中心に立って、床に広がる血と同じ色をした左目を光らせて、彼は嗤い続けたーー
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