no title
もし、あの時、彼が殺されなかったならば。
もし、あの時、彼らを殺さなかったならば。
今とは違う道を歩んでいたのだろうか。
いっそ、あの時静貴と出会わぬままあそこで野たれ死んでいたら。
彼が死ぬ事も、無かったのだろうか。
答えなど出るはずの無い問いをいくつも思い描きながら、彼は紫煙を燻らせる。
“赤い瞳は不幸の子”
誰が言い出したのか分からないそれは、あながちただの迷信では無いのかもしれない。
夜明けの名を持つ彼は、今は闇と同化するようにただただ思考の海に沈んでいった。
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