no title

いつ自分に飛び火しても不思議では無いが、せめて賢斗だけは守りたいと心に誓う静貴。

その誓いが、賢斗を思わぬ方向に導くなんて、この時の静貴は全く思いつかなかったのだった。

それから更に数日が経過した。
静貴の周りが常に緊張した空気が漂っている事を、賢斗は随分前から気がついていた。

だからこそ、変な気を使わせないように、と賢斗はそれとなく静貴と距離を置いていた。

「なぁ賢斗」

「何?」

「お前の事だから気づいてると思うけどな、最近、俺らの周りで良くない動きが目立ってきてる。瀬奈や琲音ちゃん達の周りにもな。
だから、あんまり一人でそこらをうろつくなよ」

何時になく静貴が真剣な顔をしていたから賢斗は黙って頷いた。
すると静貴はいつもの笑顔に戻って賢斗の頭をわしゃわしゃと撫で回す。

「ちょっと静貴!」

「あのガキが随分デカくなったもんだよなぁ…まぁ今でもガキだけどな」

むっとして言い返そうとした賢斗はしかし次に告げられた台詞に言葉を失った。

「なぁ賢斗。
俺は、お前を本当の家族だと思ってる。血は繋がってないけどな。本当の息子…っつーより弟に近いか。まぁそんな風に思ってる。だからな、お前にはこの先何があっても笑ってて欲しい。無理に笑えとは言わねぇけど、折角綺麗な顔してるんだから、笑わねぇと勿体無いぜ?」

感慨深げに告げられた言葉は、まるで遺言のようで。
賢斗は胸が嫌な予感でざわつくのを感じたのだったーー





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