no title
流石にそろそろ色んな人と関わっていくべきではないかというのが最近の静貴の悩みでもあった。
「なぁ賢斗、お前中学に行く気はないのか?」
ある日、思い切ってそう告げた静貴を賢斗は不思議そうな顔で見た。
「…どうしたのさ、藪から棒に」
「いやな、確かに勉学っつー点ではお前にゃ何も心配してないがな、もうそろそろ人と関わってみてもいいんじゃないか?」
「ぼくが人嫌いなのを知ってるでしょ」
「そりゃそうだけどな賢斗。一生誰とも関わらずに生きてくなんてそりゃ不可能だ。人間ってのは嫌でも他人と関わっていかなきゃいけないんだよ。そういう意味で、学校に行った方が良いんじゃねぇかと思ってな」
ついでに、お前の制服姿も見ていたい、と付け足した静貴の頭を軽く持っていた本で叩くと賢斗は「考えとく」とだけ答えた。
(まぁ、そう言っただけ進歩したか?)
昔は即答で断っていた賢斗を思い出して静貴は少し笑う。
少しずつ、少しずつで良いから彼の心が癒されれば良いと思う。
そうしていつか、彼の目を受け入れてくれる人が現れれば良い、と。
そんな事を密かに願った静貴は、一転して厳しい表情を浮かべた。
最近、周りが酷く騒がしい。
二年前に瀬奈と話していた火種が、そろそろ動き出したようだ。
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