no title

その時、静貴はようやく彼に相応しい名前を思いついた。

誰よりも深く、濃い“夜”を背負う彼に、終わらない夜は無いのだと。
誰よりも賢く、光と影の両方を背負う彼は、まるで夜と朝の狭間に居る夜明けのようだと。

そんな意味を込めた名を、彼に。

「お前の名前、決まったぜ」

「え?」

「終夜 賢斗(よすがら けんと)だ。終わる夜で終夜、賢者の賢に北斗七星の斗で賢斗だ」

「終夜、賢斗…」

そっと、噛みしめるように少年は名前を囁く。
戸籍の無い、存在すら許されなかった自分の、存在の証。

良いのだろうか。
自分は、ここに居ても良いのだろうか。
存在していて、良いのだろうか。

「最初は名字は俺と同じので良いかと思ってたんだが…その名前の方がお前に合ってる。
それで良いか?」

良いか、なんて聞かれるまでも無かった。
“名前がある”
それだけで嬉しかったのだから。



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