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四月。
少年、朝日屋真希は真新しい制服に身を包みこれから三年間を過ごす事になる中学校の校門を潜った。
入学式後、掲示板で自分のクラスを確認すると真希はその教室へと足を向けた。
ガラリと扉を開けると既に殆どの生徒が互いに言葉を交わし、友人を作る事に励んでいた。
真希は一人を好むわけでは無いし、社交的な性格で無いわけでも無い。
ただ、そう急いで友人を作る必要も無いだろう、と特に誰かと言葉を交わす事無く席を目指した。
出席番号順に並んだ席では、真希は前の方だった。
座席まで歩く途中、真希は彼同様一人で居る少年を見た。
やや長めの黒髪に、この学校の制服である漆黒の学ランを纏って窓の外を眺めていた彼は何故だか教室内で浮いて見えた。
悪い意味では無く、皆とは完全に一線を引いている、そんな感じだった。
彼は、一番後ろの席だった。
妙に彼が気になった真希は、自分の席に着くとクラス表を見て彼の名前を探す。
ーー終夜 賢斗
そう書いてあった。
(なんて読むんだろう?しゅうや?
でもそれなら一番後ろの席じゃないよね)
やがて教師がやってきて学校の説明を始めても、彼は一番も窓の外から視線を外す事は無かった。
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