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「ねぇ、そのサイコパスって何なのさ?」
「…サイコパス、又は反社会的人格。
簡単に言えば、正常な人が持っている愛情や良心と言ったような感情が欠落している人の事さ。
良心の異常的な欠落、冷淡で共感が無く、他人への思いやりが無かったり、口達者で弁舌が淀みなく、当意即妙の応対が上手かったり、人の心を操るのが上手かったりする。他にも想像力が異常に旺盛で現実よりも空想を優先したりする場合もあるみたいだけどね」
賢斗の口から語られる話を聞きながら、真希は思わず確かに、と思ってしまった。
しかし、賢斗にそんな事を言える人物が居るのか、と密かに関心したりもした。
「それって、精神病とは違うの?」
「似て非なるものさ。
これは精神病じゃなくて単なる性格異常だ。
サイコパスは社会の捕食者、なんて言われてるらしいけどね。
そして、困った事に…」
そこで一旦言葉を切り、賢斗はそっと左目に触れた。
「そんな捕食者が、何食わぬ顔で社会に多く存在してるのさ」
そう言って、賢斗は嗤った。
真希はその笑顔にぞくりとしながらも、目が離せなかった。
結局、真希の前で賢斗が素直に笑ったのは後にも先にもこれだけだった。
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