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「そう思ってもらえるなんて光栄だねぇ。化け物?大いに結構。俺は人間が大嫌いだ。人間より化け物の方が全然マシだよねぇ。残念な事に俺はただの人間なわけだけど」

ギリギリと足に力を込め、賢斗は笑う、嗤う。
赤と黒の瞳に、憎悪と哀れみを映しながら。

「あ…朝日屋!助けてくれ…!」

踏みつけられた男子は痛みに顔を歪めながら真希に助けを乞うた。
真希はそんな彼に笑顔を向けた。
賢斗とは違う、暖かい笑顔を。

「ごめん、嫌だ」

しかし紡がれた言葉は、酷く冷たいものだった。

「なん…で…っ」

「だって、賢斗が笑ってるじゃないか!
僕は誰かの笑顔を見る為なら他の何を犠牲にしても構わないよ」

「なるほど、君もまた矛盾を抱えて生きる人間なわけだ」

絶望に染まる生徒の顔をそれはそれは楽しそうに眺めながら賢斗は真希に言った。
暗い憎悪の炎が揺れる赤い瞳を、真希は美しいと思った。

「矛盾なのかなぁ?
まぁ僕は君が笑ってくれるなら何だって良いけどね」

にこにこと笑顔で真希が告げると賢斗は一瞬眉を顰め、視線を男子生徒へと移した。
賢斗達が話す間に、気を失ってしまったようだった。
彼だけで無く、周りに転がっていた他の人達も意識を無くしていた。

「つまらないなぁ、自分達の方からけしかけておいて。
ま、いいや。どうせ飽きちゃったし」

そう言って賢斗は踏みつけていた足を外すと、そのままスタスタと体育倉庫を去って行った。


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