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「賢斗!?」
慌てて扉を開けた真希は、そこに広げる光景に目を見開いた。
同じクラスの男子生徒が何人か血を流しながらその場に転がっていた。
誰もが蹲るその中央に、一人だけ立っていた者が居た。
クスクスと笑う彼の手に握られているナイフは、血で濡れていた。
そして真希の目に映る彼の横顔。
心底楽しそうに笑うその左の目は、まるでそこに流れる血を移したかのように赤い色をしていた。
「酷いなぁ、大人数でいきなり襲いかかるなんて。
でもさぁ、俺が何の用意もせずのこのこ来ると思った?残念だったねぇ。君達が考えそうな事くらい簡単に予想がつくよ。わざわざ女子の名前使って呼び出してさぁ。騙されるとでも思ったの?」
蹲る男子生徒の前にしゃがみ、彼の目の前にナイフをちらつかせながら賢斗はにっこりと微笑んだ。
それは紛れもない、嘲笑。
「それで君は、いつまでそこに突っ立てるつもり?」
呆然としていた真希の方をくるりと賢斗は振り返った。
顔は笑顔だが、目は笑っていない。されど、作り笑いでも無い。
さっきまでとはまた違う笑顔。
「何しに来たのかな?」
「賢斗が中々来ないから探しに来たんだよ」
「何度も言うけど、良い加減俺に付き纏うのはやめたらどうだい?俺と君の価値観は相反するものだ」
「…化け…物…!」
反論しかけた真希だがそれは蹲る男子生徒の声に阻まれた。
吐き出されたその言葉に、賢斗はますます笑みを深め、その男子生徒の頭を踏みつけた。
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