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「賢斗!次は理科室だって!」

真希は教科書を抱えて賢斗の目の前に立った。
賢斗の方は真希を一瞥すると不快そうに眉を顰めた。

「いつ、誰が、名前で読んで良いって言ったかな?朝日屋真希」

「いいじゃないか、友達なんだから!」

「俺は君と友達になった覚えは無いよ」

「じゃあ今から友達ね!」

「それじゃあ今すぐ絶交しよう。大体友達だって?冗談じゃない。虫唾が走る」

そう言うと賢斗はさっさと歩き出してしまう。
その後を真希は慌てて追った。

「酷いなぁー
でも僕は賢斗のそういうところ、嫌いじゃないよ」

「そう、俺は君が嫌いだよ」

それが、いつもの彼らのやりとり。
季節が移り、やがて中学最初の一年が終わろうとしていても賢斗と真希の仲は変わらなかった。
真希は賢斗に構い続け、賢斗はそれを酷く嫌った。
真希は笑顔が好きなままで、賢斗は人間が嫌いなままだった。


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