3
目を開けたら、目の前の天井は白かった。
家の天井だって白だ。
と、思う。
が、違う。
こんなに無機質な白ではない。
周りを見回す。
どうやら病院らしい。
看護師が来た。
目が醒めている僕を見て、とても驚いている。
僕は事情を尋ねる。
非常に答えにくそうだったが教えてくれた。
どうやら突然倒れて一ヶ月以上意識を失っていたらしい。
時々突然叫んだり、泣いたりしていたそうだ。
僕には倒れた記憶はない。
しかし、あの記憶はちゃんとある。
あの世界。大切なモノを失くした人が来る世界。
ああ、そうか。
僕は気付く。
僕が失くしていたのは、記憶。意識。
たとえ、家族、友人がいなくても失くしてはいけないモノをふたつ。
生きてて…生きててよかった−−−−−−−−−−−−−−−−
僕は静かに目を閉じた。
Fin.
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