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僕がはじめて見た信号は青かった。

…ここは何処なんだ。

周囲を見渡す。
どうやら今は夕方らしい。
僕は幹線道路らしい道の信号のところに立っていた。
沢山の車が僕の前を通過していく。
信号の反対側には商店街の入口がある。
店の人。夕飯の買い物をする母親達。母親についてきた子供達。賑わっている。
温かい空気がある。
何故か懐かしい雰囲気がした。

トントン。

突然僕は肩を叩かれた。
振り返る。
振り返るとそこには少女が立っていた。
顎のラインで焦げ茶の髪がきれいに切り揃えてある。
少女がしゃべる。

貴方はなんでこの世界にきたの?
……どういうことだ…?この世界はなんなんだ。何処なんだ?ここは僕が普段生活する世界とは別なのか?
そう…何も知らないのね、教えてあげる。ここは…ここは大切なモノを失くした人が来る世界。
……大切なモ…ノ…?
そう、大切なモノ。人による。感情だったり、モノだったり、誰か人だったり。貴方は何を失くしたの?
それは…わからない。気付いたらここにいたんだ。
じゃあ、探すといいよ。見つかるといいね、貴方の落としモノ。私は行かなきゃ。

彼女は去って行く。

ま…待って!

僕は思わず呼び止めてしまった。
彼女は怪訝そうな顔で振り返る。

…何?
君は…君は何を失くしてここに来たの?
私?私は…大切な人を、捜してるの。見つけなきゃ。
大切な人……?
そう。でも、あの人は多分赦してくれない。

彼女は悲しそうな表情で俯く。
そんな顔は見たくない。
そう、思った。
出会ったばかりの少女。
でも、何か知ってる。
また、懐かしい雰囲気。

じゃあ、私は行かなきゃ。また、何処かで会えたら。

彼女はそう言い残し去って行った。
僕はかける言葉が見つからず、そこに立ち尽くす。
どうしていいのかわからない。


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