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「説明もなしにすまないな、二人とも」
と側に寄ってきて二人の杯に飲み物を満たす。
「あ、え、すみません。
ありがとうございます」
「で?
俺達は今日の最終確認に呼ばれたはずなんだが」
「あぁ、それはやる予定だ。
だからここには今日行くメンバーに揃ってもらっている」
これは、と少しばつが悪そうながらも嬉しそうに彼女は広間を見回した。
「まぁ、私達の決まりというか習慣でな。
新しいメンバーが加わった日と、そのメンバーが初任務に行く前には、皆で食事を摂ることにしているんだ。
常はここまで豪勢じゃないんだけどな。
任務が危険だと、その分腕を奮ってしまう様だ」
「冥土の土産ってか?」
「アル!」
「いや、とびきり素晴らしい時間にして、また無事に帰ってきてこうして過ごそう、という意だ」
アイリスはアルの物言いに苦笑しながらも、すでに慣れてきたのか、気にすることなく意味を教えてくれた。
「だからな」
後ろからユアンの声がしたが振り向く前にアルとカイの頭はぐしゃぐしゃとかき混ぜられた。
「わっ!?」
「っおい、やめ」
「今はこの場を楽しんで、無事に帰って来いよな、って皆からの見送りってことなんだよ」
アイリスも一つ頷いて、
「ああ、だからしっかり食べていってほしい。
全員無事の祈願だ」
と微笑んだ。
「…はい」
「ああ」
「さ、それでは本来の目的をこなすか」
そして、六人にユアン、クロエを含めて宴の様な食事をとりながらの最終確認が行われ、その数時間後に見送られつつ出立した。
結局やはり確認は建前で大したことをした訳ではなかった。
しかしその前と後では気分が違う。
(緊張でもしてたか?
柄にもない)
けれど確かに、朝不意に目を覚まされた落ち着かない気分は治まっていた。
「行くぞ、カイ」
「うん。
…アル、強くなって帰ろうね」
「あぁ」
帰る場所があるということ。
久しぶりにその感覚を身に感じながら、アル達はサグゼンへと向かった。
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