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(そういやあん時、あのアホ面はほとんど口きいてねぇな。
まあ俺の知ったことじゃないが)

と、そこまで思い出してソウが自分を見ていることに気が付いた。

「どうした?」

「いや……リオウヴェルは一緒ではないのかと思っただけだ」

カイやアッシュはいつも一緒にいるためだろう、そういうものと思っているのかもしれない。

「あぁ、アイツは……」

まだ寝てる、と案外朝に弱い低血圧な自身の契約竜について言おうとした時、

「アルー!」

とカイが呼ぶ声が聞こえた。

下を見下ろすと、カイがリオウとウェンディとを連れてこちらを見上げていた。

「起きた時部屋にいなかったからびっくりしたけど、良かった。
やっぱりここにいたね」

「ああ、悪い。
一回起きたら目が冴えてな」

ソウと共に下へ降りていくと、おはようアル、と改めて言われた。

「ソウさんも、おはようございます」

「ああ」

「…おはよう」

各々のそっけない返事もいつも通りと、慣れたカイは微笑んだ。

「どうした?
まだ出発には早いだろ」

「うん、それはそうなんだけど」

とカイが言いかけたところで、パタパタとミニマムな翼で羽ばたいてアルの肩に停まったリオウが欠伸をしながら先を続けた。

「何やら出立の前に最終確認をするとかでな。
お前達を探しに来たのだ」

「ソウも一緒で助かったよー。
さ行こ行こ、多分もう皆集まってるよ」

それから、とウェンディはぱさりと翼でアルの頭を軽くはたいた。

「なんだよウェンディ」

「いい加減挨拶されたらああ、じゃなくてしっかり挨拶返しなよアル。
仲間増えたんだからさー、ね?」

「………そのうちな」

全く、主と似て礼儀には几帳面な竜である。

‡ ‡ ‡



サグゼンに行くメンバーはアル、カイ、アッシュの竜人族の他、案内・交渉人としてユカ、危険を考え戦力としてソウ、そして研究機関に興味があるというロイドの六人(と三頭)と少数だったが、復興やら何やら各々忙しく、全員で顔を合わせるのは襲撃のあった夜以来、実は今回が初めてであった。

「おう、やっと来たな」

広間に着いたアル達にロイドが声をかける。

ウェンディの言った通り、もう彼ら以外は集まっている様だった。

しかもサグゼンへ行くメンバーとアイリス等だけだろうと思っていたのに、予想外にもレジスタンスの全員が揃っていて何やら少々騒がしい。

「お、おはようございます。
遅れてしまってすみません!」

何か重大な連絡だったのだろうかと焦って謝ったカイに

「別にお前が謝る必要はないさ。
遅れて困る様な大層な用事じゃないしな」

と笑ったユアンは遅れた理由を知っている様だ。

「そうだぞ。
悪いのはアルなのだからな」

「るせぇ、お前だってカイに起こされなきゃまだ寝てただろうが」

「やめなよ、二人とも」

そんな、もはや日常となりつつある痴話喧嘩をなだめるカイの代わりにソウが会話を続ける。

「それで、最終確認と聞いてたんだが」

「ん?…ああ。
今回はアルフレッドとカイの初任務だからな。
お前のときもやったろう?」

「ああ、あれか」

一人合点がいった様に彼はヘッドフォンをしはじめた。

「お前なぁ…せっかくの」

「俺は朝食は静かに摂りたいんだ」

「え、えっと、どういうことですか?」

耳だけは会話に傾けていたカイが理解出来ずに尋ねると、答えは奥の方から返ってきた。

「あ、おはよー!!
五人ともこっちだよこっち!!
せっかくの飯冷めちゃうぜー!?
主賓がいなきゃ食えないんだからさー」

「あ、アッシュおはよう!…って、え?
……ご飯?」

遅れたことに焦って気付かなかったが、言われてみれば料理の良い香りした。

(朝食を摂りながら最終確認をするってことかな?)

普段は各自で好きにしているが、それくらい時間を要するのかもしれない。
とりあえずわからないながらもアッシュの方へ向かうと、入り口付近では死角になっていたが、皆が円形になって朝の割に豪華な食事を囲んでいた。
まるでアル達が来た日の宴会さながらである。

「あーもうやっと来たよー。
ほら早く座って座って」

「おい、マヌケ面、これはどういう」

アッシュが示した場所に急かされて座るも、そこは上座である。

気付けばソウはいつもと同じく壁に寄っており、アルとカイの二人でそこを陣取る形になっていた。

「だからオレにはアッシュって名前があるんだっての!
説明はあとあと。
じゃアイリス音頭とっちゃって」

アッシュがそう合図すると、本来アル達とは逆の場にいるべき彼女は、一度二人を見て笑んだ後、声を張り上げた。

「皆待たせたな。
それでは、アルフレッド、カイ、ウェンディ、そしてリオウヴェルの初任務の無事な成功を祈って!!」

アイリスの掛け声と同時に、朝だと言うのに皆豪快に食事を始める。

「わーこれ美味しいよリオウ」
「ふむ……なるほど美味いな」
「だろー?
アジトの女の子達はほとんど皆、料理巧いからなぁ」
「ほとんど?」
「うん、ユカの料理は正直原料が何なのかすらわからないくらい珍妙な」
「うっさいわよ黙ってなさいチャラ男!!」



「……………。」
「………えーと」

各々で会話が弾む中、状況が掴めない二人は完全に取り残されていた。

「…おいアホ面」
「だーからオレはアッシュだって何度言ったら……ってそ、そんな怖い顔するなよ。
わかってるってちゃんと説明するってば!」
「ああ、それは私がしよう」

と、今にもアッシュに掴みかからんとするアルにアイリスが振り向いた。


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