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「くっう………!!
ぐ、あああああああっ!!」
床、壁、天井。
その全てを埋め尽くしたバラ輝石。
どこに視線を動かしても目に映るのは緋色の箱庭で。
しかし彼は未だ自らの瞳も同じ色であることを知らない。
凄まじく強大な力が流れ込んでは同時にそれ以上に奪われていくのを感じる。
同時に沸き上がる矛盾した解放感と虚脱感に、身体の限界など既に超えていた。
これはあいつの色だ。
彼らを殺した男の色だ。
それだけで、怨みで耐えられる気がするのに。
───いいや、これはお前の色だ
頭に響く声が邪魔をする。
「……違う」
───受け入れろ
「違う…!!」
───これはお前の色だ
あの日お前の世界を壊したのは
「違う、オレはっ……!
うわあああああぁぁっ………母さ、…ーテル……ノ…ス…」
彼が呟いた三人分の名は誰の耳にも届くことなく、消えた。
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