38
光と闇がぶつかり合い、爆風が強く吹き荒れる。
周りの者は皆吹き飛ばされないようにするのに必死だった。
それは少し離れたところにいるスミレとソウにも当てはまる事で、思わずスミレは顔を背けた。
ソウはその一瞬の隙をついて間合いを詰めると、彼女の体に剣を突き刺した。
「かはっ...!」
スミレの口から血が吐き出される。
それを気にする様子も無くソウは、スミレの腹に刺さっている刀を無造作に抜いた。
「痛いか?」
恐ろしく冷たい声音でソウは問うた。
その目にあるのは、明確な殺意。
「痛いよなぁ?分かるぜ、俺達も同じ位痛かったからな。
でもまぁ俺とソウの二人分って事で、もう一つ行っとくか?」
蹲るスミレの傍らにしゃがみ込んでそう囁くとソウは立ち上がり、剣を高く振りかざす。
そのまま振り下ろそうとした刀は、すんでのところで飛んで来たナイフに止められた。
「おいおい、こいつの相手は任せたはずだろアルフレッド?」
目の前に立ちはだかったジャックを見て、ソウは肩を竦めながら言った。
しかし見ればジャックも満身創痍のようだ。
「ん?返事が無いって事はあいつ死んだのか?」
「...勝手に殺すな」
背後から不機嫌な声が聞こえて振り返る。
リオウと共に現れたアルもジャックのようにボロボロで瞳は完全に銀色に戻っていた。
「あぁ何だ生きてたのか。
生きてたならちゃんとあいつ足止めしとけ。お陰で邪魔されただろうが」
「だったら簡単に邪魔されるような攻撃するな。
大体何なんだよお前は。急に現れたと思ったら好き勝手やりやがって。本当にソウか?」
「良いだろう?俺が来なかったらお前死んでたぜ。それにさっきから言ってるだろ、俺はソウであってソウじゃない。
ま、俺はお前が殺されてもどうでも良いんだが、それでソウが悲しむのは避けたいからな」
口の悪い二人の口喧嘩は終わる気配を見せなかった。
あんなにも無口だったソウが急に饒舌になった姿はとても不思議なものだった。
「おい、そんな事よりまずこっち終わらせようぜ」
最初に口喧嘩を終わらせたのはソウの方で、傷を追ったスミレを抱きかかえるジャックを刀で指した。
ジャックは無言で二人を睨むとパチンと指を鳴らした。
すると辺りが白く光り、思わず顔を背ける。
光が薄まった頃ジャック達が居た場所を見ても、そこに二人の姿はもう無かった。
「ちっ、逃げやがったか」
忌々しそうに舌打ちして刀を収めたソウの隣で、アルの姿がぐらりと揺れる。
「おっと!」
そのまま倒れそうになったアルの身体を咄嗟にソウが支える。
その周りに今まで遠巻きに見ていたレジスタンスのメンバーが集まりだした。
「アル
」
真っ先に駆け寄ったのはカイで、その後にアッシュ、アイリス、ユアンと続く。
「アル、大丈夫!?」
「あぁ...なんとか、な」
「全く無茶をする。まぁいい。奴らは追い払えたからな」
「すげぇよアル!
え、本当に祖竜と契約したの?」
「うっせぇな。
お前は少し黙れ」
「ちょ、酷くない!?
...で、えっと、ソウ、だよね...?」
早口でアルに捲し立てていたアッシュが恐る恐るソウを見る。
カイもアイリスもユアンも、知らない人を見るような目でソウを見ていた。
「だから何度も言ってるだろ、ソウだって」
「おい、さっきと言ってる事が違う!」
腕を組みながら気だるく言ったソウにすかさずアルが突っ込む。
「あーいちいちめんどくせぇな。
だから出たくなかったんだよ」
がりがりと頭をかくと、ソウは親指でアジトを指した。
「仕方ねぇ、帰ったら説明する。
俺の怪我だって無理矢理塞いだだけで治ったわけじゃないし、まずはそこの元・出来損ないの話を聞こうじゃねぇか」
その言葉にアイリスが頷き、一同はアジトに戻る事にした。
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