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「竜人族のリミッターのほうは?外す手段はないの?」

「竜人族に関してはほとんど研究できてないのよ。被検者が全然いないから。連れてきてくれたら、所長は喜んでなんでもしてくれるでしょうね。自分の知識欲が満たされれば満足な人だから。
ちなみにあくまで噂で聞いたんだけど、ドラゴンと契約者が、互いの真名を呼び、「許可する。」と言えば、リミッターが外れるって聞いたけど、本当なのかしら?
…というか、そんなこと訊くなんて、知り合いに竜人族でもいるの?まさかね。いるわけないわよね。」

「当然でしょ。いたらあたしがびっくりよ。純粋に気になったから聞いてみたの。」

(いても言うワケないでしょ。
そんな事も気づかないなんて相当な馬鹿ね。)

「そうよね。で、あとは政府のことね。言っておくけどこの機関はそこまで政府とつるんでるわけじゃないのよ。これも、人づてに聞いた話だけど…」

「……。」

「ねえ、人の話聞いてる?」

「も、もちろん。人づてに聞いた話が何って?」

「そうそう。なんだか最近底辺層の議員や職員たちから政府のやり方に不満が出てるみたいよ。」

シャキン。

「ちょうど終わったわよ。あとはドライヤーをかければ完璧!」

全ての工程を終えて、地上に出るために廊下を歩いていると、

「セレディア君。」

と、呼び止められた。

「この子は誰だい?許可無く部外者を連れ込んじゃだめじゃないか。」

彼の胸元を見れば、「所長」のネームプレートをつけている。

「部外者じゃありません!私に実験材料を提供してくれた貴重な人材です!今から地上に戻してくるところですから、ご心配なく。」

(まるであたしが用無しみたいにいわないでよ)

「そうか。じゃあ僕は仕事が残ってるからね。これで。」

「はい。失礼します!」

と言ってセレディアは頭を下げた。

「わかったと思うけど、今のが所長よ。怒らせると怖いのよ〜。そういえば、この後、あなたはどうするの?」

「宿を探さなきゃいけないんだけど、いいとこ知らない?あと、あたしの髪が研究対象になってるのも気になるんだけど。」

「宿は知り合いがやってる安くていいところがあるわよ。髪に関しては内緒。」

結局、宿まで行く間に髪のことは聞けずじまいだったが有益な情報は得られたし、いい宿も紹介してもらえたので、レジスタンスのことが不安だったが少し得した気分で床に就いたのであった。


・゜・・゜・。。・゜・

「なるほど……」

少し俯いて何かを考えていたようであったアイリスは、そう小さく呟きユカに視線を戻した。

「君の話によると、ドラゴンスレイヤー研究所の人々は、竜人族を研究対象として欲しがっている、そして、リミッターの解除についての研究はまだ伸びしろがある、と」

ユカはこくりと頷く。

「そして、その研究所は政府にあまり通じておらずーー」


「それどころか、政府に対して反感を持っている研究者たちがちらほらいる、っつーことか」

アイリスの隣で腕組みをしていたユアンがすかさず続けた。

「ええ、端的に言えばね」

ユカは、髪の毛先を弄りながら答える。

彼女たちのやり取りを聞いたレジスタンスの人々は、ユカがいったい何を伝えたいのか、アイリスとユアンが何を気づいたのかを理解できないのか首を捻っていた。

(…ああ、そうか)

カイは少しユカの伝えたいことを掴んだような気がして、口を開く。

「……しかも、竜人族を連れていけば彼らは『なんでもする』んだよね」

「ええ」

「…なぁ、ちょっと待ってくれ」

眉間を寄せている顔をしたロイドが話を遮った。

「えっと…要するに……」






「…何を言いたいんだ?」




その言葉を合図に、一斉に訝しげな目をした人々の視線がユカとアイリスとユアン、それとカイに向けられる。

「つまりね、あたしが言いたいことはーー」




「ドラゴンスレイヤー研究所に、この竜人族の二人を連れていって協力したら、もしかしたらリミッター解除のーードラゴンスレイヤー達を退けることの出来る物のーー重大な手がかりが見つかるかもってことなの」


彼女がその言葉を発した直後、驚きと戸惑いと歓喜が綯い交ぜになったような沈黙が部屋を支配した。


「…戸惑うのも当たり前よね、だってこれは」

申し訳なさそうにユカは、

「もしかしたら仲間を売ることになってしまうものね」

と少し目を伏せて言った。



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