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「ふあぁぁ……」
今日は珍しく寝付きが悪かったな。
アッシュはまだ寝ているらしい。
朝ご飯の前にカイを迎えに行くか。
昼間とは違って落ち着いた街に少し驚いた。
昨日とは違う場所かと疑ってしまうほどだ。
カモメの声と波の音を味わいながら歩いているうちに図書館に着いた。
アイツは窓際の席を好むから、このあたりにいるはずなんだが……
「どこいったんだ、あいつ。」
探しに行こうとすると、
「あ、アル!」
と、呼ぶ声がする。
声のする方を向くと2階に本の山を抱えたカイがいた。
「あとこれだけだから!」
十数冊はありそうな本のタワーでカイの顔が見えない。
呆れた。全く前が見えてないくせに、よく歩けるな。
「図書館で叫ぶな。
それに朝ご飯食ってからにしろ」
「え〜。あと少しだから」
「どこがだ。
お前はどれだけ読むつもりだ。クマができてるぞ。
それに、帰らないとメシ食いっぱぐれるだろ」
いくらチワワのような目で頼まれてもこればかりは引く訳にはいかない。
アルの言うことに納得したのか、渋々とタイトルをメモして本を戻しに行く。
図書館を出ると扉の脇でアッシュが職員の女性を必死で口説いていた。
「ねぇ、今日の午後にちょっとだけお茶しません?」
「今日は忙しいんですが。」
「まあ、そう言わずに。30分だけ!おごるからさ。ね?」
「あなたのような暇な人に割く時間はないんですが。」
「つれないこと言わずにさ。」
女性の迷惑そうな顔を見るなり、すかさずカイが詫びにいく。
「知り合いが迷惑をかけてすいません!彼にはよく言い聞かせておくので。」
「は、はぁ。」
「おい、知りあi」
「本当にご迷惑おかけしました!」
ズルズル…
「また会ったら食事行k」
ゴンッ
アルの強烈な一撃が見事にアッシュの頭に命中した。
「いってー」
「腹減ってんだ。とっとと帰るぞ。ってかなんでいるんだよ。」
「昨日言ってただろ。明日の朝カイを迎えに行くって。だからここにいるだろうって思ったのさ。」
「で、職員にばったり会っちゃってナンパしてたと。」
「うっ。でも置き手紙も何もなかったから心配したんだぜ。やっぱりレジスタンスに入るのが嫌で、どこか行っちゃったのかと思ったんだからな。」
「まあ、否定はしないな。それにお前らのためじゃない。カイの頼みだから ゛仕方なーく ″行ってやるんだ。」
「よかった。アルが居てくれるだけで十分だよ。」
ホッとして気が緩んだのか
「ぐ〜」
と、カイのお腹が鳴った
「ぷっ……くくく…あっはっはっ」
「ちょ、ちょっとアッシュ!そこは笑うとこじゃ…。」
「いやー、つい。…お!いい匂いがしてるじゃん!早く食べに行こうぜ。」
「言われなくてもそうする。ここのは美味いからな。」
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