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「失礼します、
こちら、アイスミルクティとキャラメルマキアート、ホットコーヒーになります」
ウェイトレスは、テーブルにそれらの飲み物を置いてゆく。
「ありがと!
……わぁ、君かわいいね!
あとでデートしない?」
例のごとく、アッシュはウェイトレスをナンパをし始めた。
「おい」
アルはアッシュを鋭く睨みつける。
その様子に気づいたアッシュは「ちぇっ」という顔をした。
「ごめんね、呼び止めちゃって!」
アッシュが手を振るとウェイトレスは帰っていった。
カイはキャラメルマキアートの入ったマグカップを両手で持ち、ふーふー、と自分の飲み物に息を吹きかけながら訊く。
「……ところで、アッシュさんが所属してるレジスタンスって
何人くらいメンバーが居るんですか?」
「さん付けしなくてもいいよ。
あと敬語もいらない」
「えっ、でも……」
「いいって!」
「……わかりました。
あっ、違う!
……わかったよ」
戸惑いながらも、訂正するカイを見て満足そうに頭を縦に揺らすアッシュ。
「メンバーの数か……
うーん、沢山いるし、あんま数えたことないからよくわかんね。あ、でも女の子は22人いるね!それだけは覚えてる!!」
アッシュは、リラックスした体勢から普通の体勢に戻すと、無駄に胸を張り、目を輝かせながら答える。
「いや、威張れたことじゃないだろ。自分の所属してる団体の人数くらい覚えとけよ。というか、その胸を張った仕草止めろ。腹立つ」
アッシュは、えー、と不満の声を上げつつも、胸を張るのをやめ、体勢をリラックスした体勢に戻した。
カイが口を開く。
「でも、数えきれないくらい人員がいるなら、反乱はいつでも起こせるはずじゃ……」
「あー、そうなんだよ!
そうなんだけどさぁ……」
「よいしょっ」と勢いをつけながら、アッシュは急に前のめりになり顔を近づける。
「正直、人間が何人いても、ドラゴンスレイヤーたちに致命傷を負わせるのは……無理だろ?」
アッシュの声は言葉の終わりが近づくにつれ、小さくなっていった。
「無理だろうな。
竜人族が束になっても適わなかった相手だ。
人間じゃ致命傷どころかかすり傷1つつけられるかすら怪しいもんだ。」
「まぁ、だからこそ君たちをレジスタンスに誘ったわけだけどね」
「君たちは、ドラゴンスレイヤーが今では政府のお偉いさんになってるってことは知ってるよね?」
「ああ」
「ドラゴンスレイヤーは普通の竜人族よりも強い、ってことも知ってるだろ?」
アルは質問を繰り返すアッシュに対して、訝しげな顔をした。
「……お前は何を言いたいんだ?そんなもの常識だろ」
「あ、ごめん。
でも、君たちが知ってることと知らないことをはっきりさせるために、今、質問してるんだ」
「……僕たちが、知らないこと?
……質問を続けてくれる?」
カイの言葉に、アッシュは軽く頷く。
「君たちは竜人族にリミッターが設けられてるっていうのは、知ってるかい?」
「リミッター?」
アルは首を傾げる。
そんなことは今までで
一回も聞いたことがなかった。
どうやらカイも同じようだ。
彼は頭の上に何個もクエスチョンマークをだしている。
「聞いたことがないなぁ。
リミッターというからには力を制御する物のようだけど……」
このカイの返答を聞いて話が早い、と思ったのかアッシュはテンションを上げてリミッターについての説明をし始めた。
「おー、ビンゴ!
この竜人族のリミッターっていうのが、さっき話した『ドラゴンスレイヤーは竜人族より強い』ってことに関係あるんだけど……
あ、ちょいちょい知っているであろうことも話すけど、まぁ黙って聞いててよ」
カイは緊張した面持ちで椅子に座り直し、手を膝に置く。
「あ、うん。……よろしく」
「竜人族は元来、力が滅茶苦茶強いんだ。
そんで、日常生活に支障が出るからっつって、普段はリミッターかけて力を半分に押さえてるわけ」
「なるほど……それじゃあ、ウェンディが小さかったりするのは、そのリミッターが原因なわけか」
アルはウェンディに視線を移す。
「そのとーり!
物分かりがいいね、アル!!」
アル、と呼ばれたことに顔をしかめるアルだったが、そんなことお構いなしといわんばかりにアッシュは話を続けた。
「リミッターは竜人族の進化の過程で身についたっていわれてるんだ」
「リミッターは、使用者の生活に被害が出ない程度に竜の力を引き出させる。
逆に使用者が限界以上の竜の力を使おうとすると、使用者に強制的にストップをかける」
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