Тысяча девятьсот пятьдесят пять


祖国は東西に二分され、それぞれが社会主義国と資本主義国として別々に統治されていた。

10年経っても、戦争を忘れる者はいなかった。その戦争への畏怖故なのか、銃声のない、静かな戦争がはじまった。


「ここにはもう慣れたか?"сова"」

顔に大きな傷を携えた男は愉快そうに口角を吊り上げた。
сова(サヴァー)。梟。東洋で不吉や残忍さを象徴していることから、GRUの将校達が皮肉ってつけたあだ名であった。

「大佐...」

「貴様の祖国にまで広まっているぞ。嫌か?」

「...気に入ったのならそれで構いません」


雪景色の平原は、朝から車の往来が絶えない。賑やかなようで聞こえはいいが、それは盛況というには程遠い、あまりに無表情な往来だった。
そして、使われもしない殺戮兵器が、昼夜を問わず忙しく運送されていると思うと、それはあまりに滑稽だった。


「戦えないのは寂しいな?サヴァー」

男の罵るような言葉に、精一杯の本心を込めて答えた。

「ええ。全くその通りですね。ヴォルギン大佐」

戦うことが生の全てだった。
だがもうそんな時代ではない。銃口を向けずとも、戦争は起こるのだ。
ならばなぜ、俺は生き、ここに存在する?

解放された筈の1955年は、長く、苦痛だった。


Tausend Neunhundert Fünfzig Fünf(1955)



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