Auferstehung
その物語は、終幕から始まった。
スターリングラードの戦いでの敗北以来、ドイツ軍は苦戦を強いられていた。
連合軍のノルマンディ上陸作戦が成功すると、いよいよ敗戦は目前に迫った。
そして、その報はあまりにも突然だった。
「総統閣下とその妻が、地下壕で自殺した」と。
その遺言で、首相にヨーゼフ・ゲッベルス宣伝相を指名していたが、ゲッベルスはヒトラーの後を追い、妻と六人の子供を連れ、自殺した。
負けた。
何もかも失った。
幾多もの人々を殺し、それ以上の戦友を殺され、幾多もの土地を焼き野原にし、母国を焼け野原にされた。
それから、"戦争犯罪"という、聞き覚えのない罪過で、ニュルンベルクの裁判所で裁かれることになった。隣にはゲーリングが座っていた。米軍の捕虜になっていた数ヶ月間で、随分と痩せたように見えた。言葉を交わすどころか、目を合わせることもなかった。この先もないだろう。
裁判が始まると、被告側の弁明は「ヒトラーや上官の命令に従って行動したまでで、自分に責任はない」というものばかりであった。
それでも、大半の同志は死刑か終身刑を言い渡された。
俺への判決は、禁固10年。納得がいかなかった。己こそ死ぬべきもののはずだ。確かに戦争には反対した。だがあまりにも人を殺した。死刑に値しないわけがない。
奴らが本当にその刑と判断したというのか?それとも奴らは己を利用しようと?
今はただ、牢獄の扉の開閉を黙って見届けるほかなかった。
(終幕)
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