馬蹄。
雄叫び。
嗚咽。
断末魔。
混沌の戦場。

こんなことは、名族たる私の仕事ではない。

不快な匂いと共に刃を振り下ろした。
汗や返り血で濡れた髪の毛が顔にへばりついて気持ち悪い。
物見は何をしていたのか、まんまと奇襲をかけられた。

歯を食い縛って槍を防いだ。

少しでも、勢力を拡げなくてはならない。こんなところで立ち止まっている訳にはいかないのだ。

低俗な笑みを睨んだ。
私はそんな目で見られてよい人間ではない。汚らしい。穢らわしい。

不意に陣太鼓が響き渡る。
嗤った髭面の男が不信感に目をやった刹那。その首を撫でる一閃。

舞い散る紅に、満足するように微笑む羅刹。

「遅くなってしまい申し訳ございません。袁紹様。ご無事でいらっしゃいますか?」

女は、先ほどの羅刹とは別人のように、綺麗に、また慣れたように笑った。

女の名を呼んだ。艶麗に煌めく黄金を見据えて。

「蹴散らせ」

羅刹がまた、嗤う。

「お任せあれ」



黄金の日々



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