(キョウヤと氷魔)
「僕ね、前に銀河からプレゼントを貰いました」
彼は此方を見ないで話す。
「デートもしましたしキスだってしました。銀河は僕を大切にしてくれました」
『誰よりも』と云う言葉が付かなかったのが意外だった。
あいつは誰にでも平等に優しくて、平等に残酷だ。
そして、あいつの優しさを自分だけと勘違いする愚かな男も女も多い。
こいつもそうだと思った。
だが、こいつは俺が思う以上に冷静で賢い。
認識を改めながら話を聞く。
「僕が何故、ここに来たのかはわかってますよね?」
そう言って彼ははじめてこっちを向いた。
ふわふわの髪はさらりと、振り向く動作に合わせて弱々しく綺麗に揺れている。
反対に目は強い。
意志を込めた攻撃的なそれ。
対照的な二つを見比べて知る。
ああ、こいつもあいつだけしか見ていないんだ。
「貴方じゃない。僕は銀河に会いにに来たんです」
「悪りぃがここに銀河は居ないぜ」
言い返すと、彼は目を丸くした。
「では、銀河は今何処に居るんですか?」
「お前には教えねぇ」
「…っ!」
攻撃的な色が濃くなる目、それが表しているのは怒りではなく嫉妬であると知っている。
実はちょっと嘘を吐いた。
俺も、あいつの居場所は知らない。
でも、きっとお前も俺と同じ立場なら同じように嘘を吐くだろう?
だって、俺もお前もあいつの一番になりたい愚か者なんだ。
誰にでも平等で同等なあいつだから、それは叶う筈もない願いだと解ってはいるんだけれど。