(ジタンとダガー)
ダガーは強い娘(こ)だ。
ジタンは静かに空を仰ぐダガーを見つめて思う。
彼女は自分の本当の両親の事を知り自分の本当の名前を知り自分を愛し育ててくれた義理の母親の死を真の辺りにした。
それなのにダガーはいつも真っ直ぐに立ちいつも真っ直ぐ前を見て歩いている。
彼女の強さの証しとも言える短く切られた髪を風になびかせながら。
「ねぇ、ジタン!」
「なんだ?」
「セーラよ!」
「え?」
私の名前!
そう言ってダガーは微かにだが胸に残る本当の両親を感じるようにし、ふわりと微笑む。
「可愛い名前だよな!」
「有り難う!」
微笑むダガーにつられてジタンも微笑めばダガーはジタンに背中を向けた。
「でもね、私はガーネットでもあるの!」
「ダガー?」
「お父さまを亡くして心をお病みになってしまったお母さまだけれどそれまでは私をガーネットとして愛してくれたわ!」
真っ直ぐに立ったまま風になびく短く切られた髪を押さえる。
そして再びジタンに向き返り消えてしまいそうな声でジタンと呼ぶ。
「なんだ?ダガー!」
消えそうなダガーの声に代わりジタンはいつもに増して声を大きく張り上げる。
するとダガーはジタンの目の前に行き両手でふわりと微笑みを浮かべて彼の手を包み込むように握る。
「ジタン達に呼ばれるダガーも私の名前よ!」
ジタンの手から両手を離すとその空いた両手を胸元に宛てダガーは瞳を伏せた。
「私はね、名前の数だけ愛されてるの!つまり三人分も愛されてるのよ!」
それって幸せな事じゃない?
そう言ってまた静かに空を仰ぐダガーを見てやっぱり強い娘(こ)だなとジタンは思った。