過去その他 | ナノ

※現代学パロ

(竹谷と久々知)


本当は一緒に帰りたかったのだけど兵助は俺と付き合ってる事を秘密にしたいみたいだから。
少し寂しい気持ちで通学路を歩いてた。

人気の無い道まで来た処でこちらを見ている綺麗な黒色の子猫に気づいた。
大きな目をきょとんとさせている可愛らしい子猫だ。

兵助に似ているかも知れないなんて考えて俺はしゃがんで手を伸ばした。
人差し指をちらちらと揺らしながらちちちと下手くそな鼠のもの真似をしてやる。
けど、俺の努力も虚しく子猫はふいっと行って仕舞った。


「あ」


思わずがっかりすると神様はしょうもないなーとでも思ったのか代わりに愛しい人を届けてくれた。


「逃げられちゃったな」

「兵助」


立ち上がって振り向けば兵助がおかしそうに笑っていた。

俺はばつが悪い気持ちで頭を掻いて言い訳のようななんとも情けないことを言った。


「動物には好かれるほうだと思ったんだけどな」

「そうだな」


自然に俺たちは並んで歩き出した。

学校の連中に見つかったら五月蝿いだろうけど兵助はいいのかな。
俺は嬉しい。

大した会話は出来ないけど兵助の隣は凄く落ち着くんだ。
兵助もそうだといいな。

少し歩いたらまたさっきの子猫がこちらを向いて待っていた。


「おっ!」


やっぱり待っててくれたんじゃないかとしゃがみこんだ。
すると兵助も俺の真似をして腕を伸ばす。
なんだか可愛い。

子猫はまっしぐらに兵助に向かってきた。
しかも甘えた声でなくもんだから嫉妬。


「こいつ、オスだな」


俺だって兵助に真っ直ぐに駆け寄りたいのに、嫉妬に任せてそう言えば兵助が驚いて「どうして?」と聞いてくる。

兵助があんまりに無邪気だから俺は笑って「勘!」って言って兵助の頭を撫でた。

嫉妬だよって説明して仕舞ってもいいのかも知れないけど嫉妬はあんまり綺麗なものでもない気がしたから言わない。

兵助にはなるべく沢山、綺麗な気持ちをあげたい。
でも撫でた手の下で笑う兵助の顔が余りに愛しくて困った。
綺麗な気持ちだけじゃすまないのかも知れない。

そうしたら子猫の逆襲。
あろう事かこの野郎はざらついた舌で兵助の唇を舐めやがった。
呆然とする兵助の唇に赤い血が滲む。
子猫は俺の一瞬、膨らんだ怒気に怯えたのか逃げてしまった。


「大丈夫か?」


普段は色素の薄いそこに妙に赤が映えて。
吸い寄せられるようにして近付いていた。
気がついたらもう、唇は唇に触れていた。
雪みたいに淡い感触に驚いた時には俺は顔を赤くして立ち上がっていた。

どうしよう。
綺麗な気持ちをってさっき思ったばかりだったのに。


「ごめん、粋なり」


情けなくて兵助の顔が見れない。
自分でもわからない気持ちに突き動かされていた。
するとふいに手に冷たくて柔らかい感触が絡んだ。
えっと見下ろせば兵助に手を繋がれていて。


「帰ろうか」

「…あぁ」


そうやって包むみたいに優しく笑うからいいんだってわかった。
俺たちは恋人同士でキスをしたり手を繋いだりして気持ちを伝え合う仲なんだって。


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