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(三郎と雷蔵)


三郎はそっと雷蔵の隣に腰掛けた。「ねぇ、さっき中在家先輩と一緒にいたでしょ?なにを話してたの?」三郎は笑みを浮かべて問う。「図書委員会の事、とか、」「それだけ?本当にそれだけ?」五月蝿いなと雷蔵が返せば三郎は雷蔵の肩に手を回し耳元に口を寄せて言った。「私だって嫉妬するんだよ」まただ。いつもこうやって嘘を吐く。まるで呼吸をするように嘘を吐くものだから雷蔵もはじめは気がつかなかった。微笑を浮かべた人の良さそうな顔でつらつらと嘘を並べて日々を過ごす。三郎はそんな奴だ。「雷蔵、」不意に名前を呼ばれ、振り向けば雷蔵の唇に三郎の唇が重ねられる。肩を掴み押し返せば名残惜しげに唇は離された。「今、別の事を考えていただろ?」だったらなんだというのだ、三郎になんて関係無いだろうと雷蔵は心の中で悪態をつく。「雷蔵には私の事だけ考えていて欲しい。…私の事、だけ」そう言って三郎はふわりと雷蔵を抱きしめる。(僕はいつも三郎の事を考えてるよ。だって僕の世界は三郎だから。でも三郎は僕の事なんて、考えてもくれない)「愛してるよ、…雷蔵」そう言って、三郎の口はまた嘘を吐いた。


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