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※女装ねた

(文次郎と仙蔵)


文次郎は珍しく呆気にとられ、目の前の人物を見つめた。

それは美しい女性だった。
美しい女性の姿をした仙蔵だった。

文次郎は我に返るとすかさず片膝をついて礼の形をとった。


「お前を守る権利を、…俺にくれないか?」


今度、呆気にとられるのは仙蔵の方である。
なにを勘違いしているのだこの男はと焦りを浮かべて文次郎を見下ろす。


「文次郎、私だ」


当然、低過ぎずかと言って高くもない聞き慣れた声が文次郎の耳に届いている筈なのに、文次郎は顔を上げてくれと伸ばした仙蔵の手を取ってその手の甲に口づけた。

ぶあっと一気に仙蔵は耳までを真っ赤にする。
どくどくと心臓が脈を打つ。
文次郎は顔を上げた。


「知ってる。知ってるぞ、仙蔵。俺が守りたいのはお前一人なんだから」


そして、好きなのも愛してるのもお前一人だと言い微笑んだ。
仙蔵は真っ赤な顔のまま空いた手でどくどくと脈を打つ心臓を抑える。


「守るだの好きだの愛してるだの勝手過ぎるぞ、ばかもんじ!」


そう吐き捨てるように言い耳まで真っ赤になった顔を大げさに文次郎から背ける事しか仙蔵には出来なかった。

心臓はまだどくどくと脈を打っていて五月蝿い。


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