過去その他 | ナノ

※現代学パロ

(三之助と作兵衛)


一番最初に嫌いと言われたのは、そうだ、遊ぶ約束をしていた日。
両親の都合、と言うよりも母親が道に迷って帰って来れなくなったせいで三之助と父親と警察で母親の捜索をしなくてはならなくなって仕舞った。
その日の朝、日が明けたばかりだと言うのに着替えをしっかりと済ませてリュックを背負って三之助の家の前まで来ていた作兵衛に三之助は予定が入ったと伝えた。
それまできらきらしていた目は急速に曇って、涙を浮かばせながら言ったのだ。

うそつき。だいっきらいだ。

それ以来、嫌いと言われ「大嫌い」を大好きな君にた記憶は数あれど好きだなんて一度も言ってくれた事はない。

今だって、楽しそうに左門に向けているその笑顔を、ちょっとはこっちに向けてくれればいいのに。

そう思いながら、細い背中に声を掛けると作兵衛は振り向いて三之助を睨んだ。


「なんだよ」


言って作兵衛は手元の筆箱を投げる。
飛んで来た筆箱は三之助の胸にびたりと当たった。

まったく手癖の悪い。

三之助が筆箱を投げ返すと作兵衛は睨みをきかせたまま宙で受け取る。


「お前さ、もっと可愛い処、見せらんないのか?」

「は?なんでお前に」


口の減らない。
いつもの事だが今日はやけに俺にだけ口も態度も悪る過ぎないか?と言えば五月蝿ぇと返された。

ふと、さっきまで黙っていた左門が「四月馬鹿(エイプリルフール)」と呟いた。

途端に作兵衛の顔がみるみる真っ赤になっていった。
三之助はそんな作兵衛の姿に首をかしげる。
暫く、真っ赤になったまま黙っていた作兵衛だったが覚悟を決めたかのように拳を握り声を大きく張り上げて三之助に向かって叫んだ。


「嫌いだ!大嫌いだ!」


三之助は目を丸くする。


「だいっきらい!」


三之助は丸くしていた目を細めてにやりと笑った。
左門も三之助を真似してにやりと笑った。
作兵衛だけが顔を真っ赤にしている。

三之助はにやりと笑っていた口を元に戻し作兵衛をじっと見つめた。


「俺も、大嫌いだ」


言うと作兵衛を抱きしめた。
作兵衛は自身を抱きしめる三之助の腕の中で大人しく目を閉じる。

左門は飽きるまでただただ二人を眺めていた。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -