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(涼野と南雲)


しんと静まりかえる部屋に一人佇む。

今日はついてないと目元を真っ赤に腫らせながら南雲は思う。
南雲は見て仕舞ったのだ。
涼野が見知らぬ女の子と二人きりで保健室にいるところを。

南雲は中学生の頃から涼野が好きだった。
しかし、南雲も涼野も男。
付き合うどころか告白さえ、ままならない。

正直、一緒に高校生活を送れることすら叶わないかも知れなかった。

頭のいい涼野と悪い南雲。
頭の悪い子が集まる高校にしか進学出来なかった南雲はもう、お日さま園でしか会えないのかと気を落とした。
のだが、何故か、結果的に涼野も南雲と同じ高校に通うことになったのだ。
涼野曰くは近いからとのこと。
理由はどうあれ南雲は嬉しかった。
付き合えずとも好きだと伝えられずとも、一緒にいれる。
嬉しくてたまらなかった。

なのに、今日、涼野が女の子と二人きりでいるところを見て仕舞った。
瞬間、今まで浮かれた頭の熱が冷めたかのように感じられた。

涼野だって年頃なのだ。
女の子に興味があるだろうし、恋だってしたいだろう。

そんなことは南雲だってわかっている。

目頭ばかりが熱を帯びる。

ぽろりと止まった筈の涙が零れ落ちると同時にこんこんと聞こえたのはのっく音。
ヒロトか厚石あたりが心配して来てくれたのかと思いそっと扉を開ければ、目の前には涼野の姿。

瞬発的に扉を閉める、が、その行為は涼野の手により阻まれて仕舞った。


「なんで、閉めようとするの?」


扉を無理やり抉じ開けて涼野は首を傾げる。
南雲は素っ気なく別にとだけ答えて、ベッドまで歩むとそこに腰を下ろす。


「そう。…ねぇ、元気がないみたいだけど、どうかしたの?目が真っ赤だけど、…もしかして、泣いてたの?」


一番聞かれたくない人物からの一番聞かれたくない質問。

その質問がまるで、自分の気持ちを知っていて、今日の光景を見たことも知っていて敢えてそれを語らせようとしているように思えて、南雲はかっと頭に血を上らせた。


「…てんだろ、」

「え?」

「わかってんだろ、俺の気持ち!わかってて、全部、わかってて、聞いてるんだろ!!」


喉を押し潰すようにして怒鳴る。
喉が痛もうが、声が掠れようが構いはしない。


「そうだ!俺は風介が好きだよ!友だちとしてじゃなくて恋愛対象として!気持ち悪いだろ、男同士なのにそんな風に好きだなんて!」


そこまで叫び、失った酸素を取り戻そうと南雲は息を吸い、再び言葉を吐き出そうと口を開くもその口は涼野の唇により塞がれた。


「…んっ、」


南雲はなにが起きたのかがわからず、目を見開く。
涼野の唇が離れ訳がわからないまま肩で息をしていると、涼野が口を開いた。


「私もね、君が好きだよ、晴矢」

「…え、っと、」

「もう一度、言おうか?私は晴矢が好きだよ。君と同じ意味でね」


言って、涼野は微笑んだ。
南雲は目をぱちくりとさせてからかぁっと頬を真っ赤に染めてうつ向いた。


「じゃ、じゃあなんで今日、女子と二人きりで保健室にいたんだよ」

「え?」

「ほ、放課後、だよ。いたじゃん、保健室に。女子と二人きりでさ」


口を膨らましながら言うと涼野はあぁ、とがってんを打った。


「あの子はね、私にじゃなくて晴矢、君に用があった子でね、…君が好きなんだって」

「はぁ?」

「で、君と仲のいい私に君について知りたいから教えてくれと言ってきた。私は君についてなにも語らなかったし、彼女に君には晴矢は似合わないと君への想いを諦めさせようとさえして仕舞った。彼女に君を取られたくなくて」


勝手なことをしてすまない、律儀に頭を下げて謝る涼野。
そんな涼野の手をぎゅっと南雲は握る。


「謝んなよ。謝るようなこと、してねぇじゃんか。俺としては、風介のことが好きな俺としては、そうしてくれてよかったしよ」

「…晴矢」


な?と言って笑えば、情けない顔を上げた涼野もつられて微笑む。
涼野の微笑みに赤みが引いてきた筈の南雲の頬が再び真っ赤に染まる。


「な、なぁ、風介」

「なに?」

「俺は風介が好きで風介も俺が好きってことはさ」

「私たち、付き合っていいってこと、だよね」

「…っ、」

「よろしくね、私の晴矢」

「お、おう、」


ふふっ、可愛いと涼野は微笑み南雲の唇を自身のそれで塞ぐ。
今度は触れるだけのキスではなく深く熱いそれを捧ぎ南雲の腰にそっと手を這わす。

南雲が真っ赤な頬を涙で濡らし、幸福と苦しみの間で喘ぎ鳴くまで、…残り何秒?


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